フェスティバル 税効果会計2(1級)-簿記スクリプト


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繰延税金○○発生額計算

  ここでは実効税率を40%として様々な差異から繰延税金資産、繰延税金負債を計算してみます。
  その有価証券の評価差額や商品の評価損は差異発生額に実効税率を掛けます。その金額分だけ繰延税金資産を計上します。
  引当金超過額もその金額に0.4を掛けた金額が繰延税金資産となります。なので、対象となる引当金超過額を合算してから0.4を掛ければ良いです。
  繰越欠損金は将来、利益と相殺できると見込まれる分に0.4を掛けます。繰越欠損金は後で利益から控除した時に税額を減少されるので、充分な利益を計上できそうにないなら全額を繰延税金資産にはできません。また赤字続きで当面、法人税を支払う可能性がないなら繰延税金資産自体計上できません。
  減価償却超過額については企業会計上の減価償却費から税務上の減価償却費を引いた金額に0.4を掛けます。取得価額100万円、残存価額10%、定額法で償却、の備品の耐用年数が税務上8年にもかかわらず、5年しか使えないだろうと耐用年数5年で減価償却すると、(100×0.9÷5−100×0.9÷8)×0.4、で27,000が償却初年度の繰延税金資産となります。

当期の法人税等調整額

  差異の一部が解消する場合は当期の実質的な増減額が法人税等調整額となります。また繰延税金資産計上による税の減少と繰延税金負債計上による加算は相殺します。

前期末当期発生当期解消当期末
減算差異13,0007,0003,0007,000
減算差異24,0008,0004,0008,000
減算差異35,0009,0005,0009,000
加算差異12,0003,0001,0004,000

  このデータだと前期末に比べて減算差異1が4,000、減算差異2が4,000、減算差異3が4,000、加算差異1が2,000増加しています。よって、4,000+4,000+4,000−2,000、で減算差異が実質的には10,000増加したことになります。よって繰延税金資産は実効税率が40%なら、10,000×0.4、で4,000となります。法人税等調整額も4,000となり、当期の税額を4,000減少させます。仕訳はこうなります。

(借)  繰延税金資産   4,000    (貸)  法人税等調整額   4,000

当期の法人税等調整額2

  次は減価償却による繰延税金資産の発生と解消をやります。実効税率40%、取得価額100、残存価額10%、の備品を定額法で減価償却していきます。計算に使用する耐用年数が税務上は8年にもかかわらず企業会計上は5年で償却するとします。
  毎年の償却費は企業会計では、100×0.9÷5、で18、税務上は、100×0.9÷8、で11.25となります。
  毎年の繰延税金資産の発生額の計算方法ですが、まず税務上の簿価と実際の簿価の差額を求めます。これに実効税率を掛けると当期終了時点で計上させているべき繰延税金資産総額が求められます。ここから前期末時点で計上済みの繰延税金資産を控除して当期発生額を求めます。
  1年目末の企業会計上の簿価は、100−18、で82、税務上は、100−11.25、で88.75となります。この差額に0.4を掛けると2.7となります。これが期末に計上されているべき繰延税金資産です。前期末はまだ0ですので、当期発生は額は2.7となりまり、この分だけ税額は減少します。
  2年目末の企業会計上の簿価は、82−18、で64、税務上は、88.75−11.25、で77.5となります。この差額に0.4を掛けると5.4となります。これが2年目末に計上されているべき繰延税金資産です。前期末に計上済なのは2.7ですので、当期発生は額は、5.4−2.7、で2.7となり、この分だけ税額は減少します。
  6年目からはすでに減価償却が終了していますが、税務上はまだなので、実際の簿価と税務上の簿価の差が縮まり始めます。6年目末は当期末にあるべき繰延税金資産は9なのに対し、残高は4.5です。よって繰延税金資産を4.5取り崩し、費用化を開始します。税務上の耐用年数が過ぎるまで費用化は続きます。
  総償却額は企業会計でも税務上も変わりません。よって、税務上の耐用年数に達した時点で差異は無くなります。
  定額法だと減価償却費が毎期同じですので、繰延税金資産も同額ずつになります。定率法だと毎期、異なりますが、計算方法は同じです。

経過年簿価税務上前期末当期発生当期末
1年目末8288.7502.72.7
2年目末6477.52.72.75.4
3年目末4666.255.42.78.1
4年目末28558.12.710.8
5年目末1043.7510.82.713.5
6年目末1032.513.5-4.59
7年目末1021.2513.5-4.54.5
8年目末10104.5-4.50

  次は利益処分方式による圧縮記帳積立金を採用した備品の減価償却です。ここでは取得価額を圧縮した場合との差額を使用して計算します。
  実効税率40%で、取得価額200の備品を補助金100を受け取って購入、これを耐用年数5年、残存価額0、の定額法で償却していきます。まず購入時に100を差額が発生します。これに0.4を掛けた40を繰延税金負債とします。1回償却すると簿価の差額は80となり、これに0.4を掛けた32が期末にあるべき繰延税金負債です。しかし前期末には40計上されているので、合わせるためには8取り崩します。
  圧縮積立金の方は購入時の差額で、繰延税金負債にならなかった部分、60を積み立てます。差額×(1−実効税率)、でも計算できます。1回償却すると簿価の差額は80となり、これに0.6を掛けた48が期末にあるべき繰延税金負債です。しかし前期末には60計上されているので、12取り崩します。という訳で毎年の仕訳はこうなります。


(借)  減 価 償 却 費    40    (貸)  減価償却費累計額   40
(借)  圧 縮 積 立 金    12    (貸)  繰延利益剰余金     12
(借)  法人税等調整額    8    (貸)  繰延税金負債       8

簿価の比較繰延税金負債圧縮積立金
経過年圧縮有圧縮無前期末当期発生当期末前期末当期発生当期末
購入時1002000404006060
1年目末8016040-83260-1248
2年目末6012032-82448-1236
3年目末408024-81636-1224
4年目末204016-8824-1212
5年目末008-8012-120

実効税率の変更

  最後は実効税率が変更された時の繰延税金○○計算です。これにも当期終了時点で計上させているべき額から計上済みの額を控除するという計算法が使えます。 
  減算差異が前期と当期に1万ずつ発生し、全く解消していないとします。そして当期から計算に使用する実効税率が40%から41%になったとします。まず前期の計上額は4,000となります。当期末にあるべき繰延税金資産は2万に0.41を掛けた8,200となります。ここから前期末に計上済みの4,000を控除した4,200が当期の計上額になります。単純に実効税率を掛けた場合より100多くなっていますが、これは初めから新税率だったとしたら、前期に計上しておくべき分まで計上したからです。



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