フェスティバル 長期請負工事(1級)工事進行基準計算スクリプト付き-簿記スクリプト


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工事完成基準

  ここでは着工から完成まで数年かかるような大規模建設工事の利益計上方法をやります。方法は2通りありますが、まずは工事完成基準から。
  これは工事中は一切、利益を計上せず完成した時に全額をまとめて計上する方法です。工事中の発生原価は未成工事支出金勘定に集計し、工事完成時に請負価額から総発生原価を差し引き利益を計上します。完成時に全原価を製品勘定へ移す個別原価計算と似ています。ちなみにどっちの方法でも発生原価の集計は個別原価計算の手法で行われます。今が平成25年12月31日の決算日とすると…

請負価額請負時見積価額前期末まで
の発生原価
当期末まで
の発生原価
完成予定日
案件160,00054,000 38,00054,000平成25年6月31日
案件270,00063,00031,50047250 平成26年6月31日

  工事完成基準だと当期の利益として計上できるのは案件1の利益のみです。その金額は請負価額から総発生原価を引いた6,000となります。

工事進行基準

  工事進行基準は工事の進行状況に応じて毎期、利益を計上する手法です。こうすると今期はこれだけの原価がこれだけの利益の源になったというように毎期、原価と利益を対応させられるようになります。
  また毎期の企業活動を反映できるというメリットもあります。当期、完成した工事がゼロの場合、工事完成基準だと当期の工事の損益計算がまったく行われないので、全く工事をしていないように見えてしまいます。しかし工事進行基準なら毎期、現在進行中の工事の状況を知ることができます。工事進行基準では毎期の売上げ、原価、利益、の計算方法はこうなります。

当期の売上=請負価額÷見積価額×当期発生原価

当期の利益=当期の売上−当期発生原価

請負価額請負時見積価額前期末まで
の発生原価
当期末まで
の発生原価
完成予定日
案件160,00054,000 38,00054,000平成25年6月31日
案件270,00063,00031,50047,250 平成26年6月31日

  まず、当期末までの発生原価から前期末までのものを引いた当期発生原価を求めます。案件1の当期の売上は、60,000÷54,000×16,000、で17,778。利益は、17,778−16,000、で1,778。案件2の当期の売上は、70,000÷47,250×15,750、で17,500。利益は、17,500−15,750、で1,750。
  この式では売上が原価の何倍かを求め、それに発生原価を掛けて当期の売上を求めています。利益だけ求める場合は先に、請負価額−見積価額、で総利益を出し、当期は総原価の半分が発生しているから当期の利益は総利益の半分、という求め方もあります。

見積価額の変更

  次は工事中に材料価格高騰などで見積価額を変更した場合の計算方法です。見積価額を変更したら、その期から今まで使用してきた当初の見積価額を新しい見積価額に置き換えて計算します。上記の式を使うと初めから新しい見積価額だった場合と同じになってしまいます。そこで以下の式を使い、当期の売上を求めます。

請負価額÷新見積価額×当期末までの総原価−前期までに計上済みの売上

請負価額請負時見積価額前期末まで
の発生原価
当期末まで
の発生原価
完成予定日
案件380,00072,000 54,00064,800平成28年6月31日
案件490,00081,00048,60060,750平成29年6月31日
   当期に案件3の見積をやり直したところ、完成までの所要原価は5,000増加した。
   当期に案件4の見積をやり直したところ、完成までの所要原価は7,000増加した。

  案件3の前期末までの売上は、80,000÷72,000×54,000、で60,000。案件4の前期末までの売上は、90,000÷81,000×48,600、で54,000。
  案件3の新見積価額による当期末までの売上は、80,000÷77,000×54,000、で67,325。案件4の新見積価額による当期末までの売上は、90,000÷88,000×60,750、で62,131。
  案件3の当期の売上は、67,325−60,000、で7,325。案件4の当期の売上は、62,131−54,000、で8,131。
  案件3の当期の利益は、7,325−10,800、で-3,475。案件4の当期の利益は、8,131−54,000、で-4,019。

  こうして変更後の売上から元の高い利益率で計上された売上を引くことで、当期の売上は低下します。これは今まで見積価額が低い分、余分に計上されていた売上が一気に当期の売上から引かれるためです。
  案件3の見積価額に変更がなかった場合の当期の売上は、80,000÷72,000×(64,800−54,000)、で12,000。変更後の売上より4,675多いです。見積価額に変更がなかった場合の当期末までの売上合計は、80,000÷72,000×64,800、で72,000。最初から変更後の見積価額だったとすると、当期末までの売上合計は、80,000÷(72,000+5,000)×64,800、で67,325。72,000−67,325、は4,675。この最初から変更後の見積価額だった場合に比べて当期末までに過剰に計上されていた4,675が売上から一気に引かれるため当期の売上は変更前より4,675減少します。

練習問題

  では練習問題!以下の4つの工事から発生するそれぞれの当期の利益を求めてください。

請負価額請負時見積価額前期末まで
の発生原価
当期末まで
の発生原価
案件1
案件2
案件3
案件4

当期に案件3の見積をやり直したところ、完成までの所要原価は増加した。
当期に案件3の見積をやり直したところ、完成までの所要原価は減少した。



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