くるま裏話


1級工簿・原価

総合原価計算2

仕損と減損2

工程別原価計算2

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連産品

配合・歩留差異

原価予測


全部原価計算の損益分岐点

直接標準原価計算差異分析

多種類製品のCVP分析

活動基準原価計算

差額原価収益

差額原価収益
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変動費と固定費

  ここでは、原価の発生額と生産量がどう関係しているかを探ります。そのために、生産量1単位当たりの変動費と生産量と無関係の固定費を求めます。これが解れば生産量を増加させると、発生原価はどれ位増加するのか事前に計算できるようになります。発生原価を変動費と固定費に分解する方法は過去の実績値を使用するタイプと、そうでないタイプに分けられます。
  過去の実績値を使用しない手法には技術的予測法(IE法:インダストリアル・エンジニアリング)があります。IE法では、製造工程を分析し、この工程で製品を○個生産すればこれぐらいの原価が発生するはず、という推定を行います。新規に立ち上げた工程では、こうするしかありません。
  稼動2年目など、実際発生原価のデータがある場合は、それを活用します。まずは、費目別精査法を適用します。この手法では、発生原価を仕訳の勘定科目別など、細かく分解します。そしてその一つ一つを、主要材料費は完全に生産量に比例するから全て変動費、減価償却費は全く関係無いから全て固定費、というように仕分けていきます。電力料金や人件費など、両者が混在している費目は時給制の部分は変動費、月給制の部分は固定費、というように分解します。
  変動費部分と固定費部分があり、両者の金額が不明の費目については、高低点法や回帰分析を使用します。

高低点法

  高低点法では、正常な操業度の範囲内で、最も生産量が多い時と少ない時のデータセットを使用し、変動費部分と固定費部分を求めます。以下の生産量と発電部門の燃料費のデータから、燃料費の変動費部分と固定費部分を求めます。連立方程式を作ってもいいですが、四則計算でも求められます。
  最も生産量が多い月は12月、少ない月は6月です。12月は6月より、生産量が350、対象費目の発生額が28,000多いです。この28,000は全て変動費です。よって、28,000÷350、で変動費は製品1単位につき、80となります。後は、42,000−500×80、か、70,000−850×80、で固定費は2,000となります。
  これで、予定生産量×80+2,000、で燃料費を予測できるようになりました。しかし、12のデータセットの内、2組しか使っていません。また、この2組が不変だと、他の10組の生産量と燃料費が変化しても同じ結果となります。よって、高低点法はかなり不正確な方法といえます。

データセット数 12
生産量
燃料費
1月55045,000
2月68056,000
3月80065,000
4月65055,000
5月72060,000
6月50042,000
7月61050,000
8月57548,500
9月64053,000
10月77765,000
11月81067,000
12月85070,000

回帰分析(最小自乗法)

  原価予測法の一つにスキャッター・グラフ法というのがあります。これは、生産量と発生原価の関係を表す点を打ち、それに最も合うと思われる直線を強引に引きます。その直線が生産量が100個増加する度にどれだけ、右肩上がりになるかから、変動費を求めます。回帰分析(最小自乗法)は、その点と直線の距離の2乗の和が最小になる変動費と固定費の組み合わせを求めます。下記のデータの生産量×変動費+固定費の誤差の平均が最小になる組み合わせを求めるともいえます。

データセット数 
生産量
燃料費
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月

  計算のためには下記の表が必要です。

生産量
発生原価
生産量の2乗
生産量×発生原価
1月
550
45,000
302,500
24,750,000
2月
680
56,000
462,400
38,080,000
3月
800
65,000
640,000
52,000,000
4月
650
55000
422,500
35,750,000
5月
720
60,000
518,400
43,200,000
6月
500
42,000
250,000
21,000,000
7月
610
50,000
37,2100
30,500,000
8月
575
48,500
330,625
27,887,500
9月
640
53,000
409,600
33,920,000
10月
777
65,000
603,729
50,505,000
11月
810
67,000
656,100
54,270,000
12月
850
70,000
722,500
59,500,000
8,162
676,500
5,690,454
471,362,500
平均
680
56,375
 
 

  この表の数値を以下の公式に当てはめると、

変動費=生産量×発生原価の合計×データセット数−生産量の合計×発生原価の合計÷(データセット数×生産量の2乗の合計−生産量の合計の2乗)

変動費=471,362,500×12− 8,162×676,500÷(12×5,690,454−66,618,244)

 
で80.828となります。固定費は以下の公式に当てはめると、

固定費=発生原価の平均−生産量の平均×変動費

固定費=56,375−680×80.828

 
で1411.96となります。


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