

多種類製品のCVP分析
ここでは、複数の製品を販売している場合のCVP分析や売上高差異分析をやります。多種類製品のCVP分析では、全売上個数に占める各製品の割合が一定であると仮定しておきます。この割合をセールス・ミックスと言います。以下データで損益分岐点売上高、その際の製品Aの販売量、目標利益達成時の売上高を求めてみます。
100個を1セットとすると1セット当たりの貢献利益は、(400−160)×47+(600−240)×33+(800−320)×20、で32,760です。9,828,000÷32,760、で損益分岐点は300セットとなり、売上高は、(400×47+600×33+800×20)×300、で16,380,000、製品Aの販売量は、47×300、で12,100となります。目標利益達成時の売上は、(9,828,000+5,077,800)÷32,760、で455セットとなり売上高は、(400×47+600×33+800×20)×455、で24,843,000。
加重平均を使う方法もあります。加重平均は1セットの合計値を個数で割った1個当たりの平均値です。販売単価なら、(400×47+600×33+800×20)÷100、で546、なら、32,760÷100、で327.6となります。損益分岐点を求めるなら、327.6÷546、で貢献利益率0.6を求め、9,828,000÷0.6、で求められます。計算結果は先ほどと同じとなります。
セールス・ミックス差異分析
販売製品が複数あっても予定セールス・ミックスを設定しておけば、予定売上高と実際売上高の差異分析を行えます。ここでは、価格差異、セールス・ミックス差異、総販売量差異を求めます。ポイントはどの数値を計算に使用すべきかの選択、これに尽きます。
製品Aの価格差異は、(380-400)×26,500、で525,000の不利差異となります。実際に販売した製品から発生しているため、単価の差に実際販売量を掛けます。同様に計算すると、製品Bは18,900の不利差異、製品Cは147,000の有利差異となります。合計すると、価格差異は567,000の不利差異となります。
セールス・ミックス差異を計算するためにセールス・ミックスとセット数を計算しておきます。1セット100個とすると、予定販売量の合計は50,000なので500セット。各製品の予定販売量を500で割ると、製品A47%、製品33%、製品C20%、という予定セールス・ミックスが求められます。実際販売量の合計は52,500なので525セット。各製品の実際販売量を525で割ると、製品A50%、製品B36%、製品C14%、という実際セールス・ミックスが求められます。セールス・ミックス差異は実際セールス・ミックスが予定と違うことで売上高がどう変化したか表しています。計算に使用する数値は、比べる対象の予定・実際セールス・ミックス、販売量は販売した製品から差異が発生しているので、実際販売量の525を使用、販売単価は価格差異の混入を防ぐため、予定販売単価を使用します。製品Aだと、(50×525−47×525)×400、で630,000の有利差異となります。同様に計算すると、製品Bは945,000の有利差異、製品Cは2,520,000の不利差異となります。合計すると、セールス・ミックス差異は945,000の不利差異となります。
総販売量差異は、セット全体の販売量の増減を表しています。データがあれば、市場占有率差異と総需要差異に分解できます。計算に使用する数値は、比べる対象の予定・実際販売セット数、セールス・ミックス差異の混入を防ぐため、予定セールス・ミックス、販売単価は価格差異の混入を防ぐため、予定販売単価を使用。製品Aだと、(47×525−47×500)×400、で470,000の有利差異となります。同様に計算すると、製品Bは495,000の有利差異、製品Cは400,000の有利差異となります。合計すると、総販売量差異は1,365,000の有利差異となります。
差異の計算結果を分析をすると、最も高い製品Cを値上げする代わりに他の二つを値下げした結果、予定より25セットの販売増となり、1,365,000売上高は伸びました。値上げによる販売減で、製品Cのセールス・ミックス差異は2,520,000の不利差異に、これは他の値下げした製品の販売増でもカバーできず、さらに値引きによる価格差異で1,365,000の総販売量差異は吹き飛び、売上高は予定を147,000下回ったことが分かります。
差異の合計額のみを知りたいなら、加重平均単価を使用する計算法もあります。まず、実際セールス・ミックスで予定販売単価の加重平均単価528円、実際セールス・ミックスで実際販売単価の加重平均単価517.2円、予定セールス・ミックスで予定販売単価の加重平均単価546円、を求めます。価格差異は実際セールス・ミックスで予定販売単価の加重平均と実際セールス・ミックスで実際販売単価の加重平均を比べ、(517.2−528)×525×100、で567,000の不利差異、セールス・ミックス差異は価格差異の混入を防ぐため、予定セールス・ミックスで予定販売単価と実際セールス・ミックスで予定販売単価を比べ、(528−546)×525×100、で945,000の不利差異、販売量差異は予定より2,500多く販売できたので、これに予定セールス・ミックスで予定販売単価の加重平均を掛けて1,365,000の有利差異となります。
リニア・プログラミング(線形計画法)
次は最も多くの利益を生み出す"最適セールス・ミックス"の求め方をやります。多くの利益を得たいなら、多くの利益を生み出す製品ばかり生産すればいいです。しかし、何らかの制約があると、そうとは限らなくなります。
第1工程 月間186時間 | 第2工程 月間159時間 | 貢献利益 | |
製品A | 4時間 | 5時間 | 1,500 |
製品B | 6時間 | 4時間 | 1,700 |
以上のような作業時間の制約があるとします。まず、貢献利益の高い製品Bを可能な限り生産すると31個となります。第1工程の作業時間を使い果たすので、製品Aは生産不可能となります。この場合の貢献利益は52,700です。合計作業時間の短い製品Aを可能な限り生産すると31個となります。製品Bは1個となります。この場合の貢献利益は48,200です。しかし、まだまだ、利益は増やせるはずです。どちらも、作業時間を使い果たしていないからです。そこで次のような方程式を立てます。
5a+4b=159
これを、解くと製品A15個、製品B21個となります。この場合の貢献利益は58,200です。よって、最適セールス・ミックスは5:7となります。